マリオネット★クライシス
「それは……」
曖昧に言葉をぼかして、視線を彷徨わせる。
気持ちが揺れたわけじゃない。
彼にわかってもらうのは難しいだろうなと思ったからだ。
実際、前にも海外留学に憧れたことはある。
英語は役者としても財産になるだろうし、知らない世界を知るのは楽しそうだなって。
ただ……
今のわたしは、崖っぷち。
そんな状態で数年のブランクなんて……怖すぎる。
芸能界の生存競争は激しく厳しい。
映像技術は進歩するし、トレンドは日夜更新される、スタッフはどんどん入れ替わる。そこに食らいついて適応していける人だけが、次の仕事を勝ち取ることができるわけで。
リアルタイムのその変化を、いくらネット環境が普及した現代とはいえ、リモートで感じ取るのは不可能だ。
そんな危ない橋を、今のわたしに渡る勇気はない。
わたしには、女優しかないから。
「……わたしね、デビューから今までで2度、仕事が全然なくなっちゃった時期があってね」
この気持ちを、ジェイにどうやって説明したらいいだろう?
考えあぐねたわたしは、言葉を探しつつ、二本の指を立ててみた。