マリオネット★クライシス

幕間④ 都内某遊園地・園内

「ねえねえ、あのカップル超素敵じゃない！？」
「まさに美男美女だねーめっちゃお似合い！」
「モデルさんじゃないの？　2人ともオーラすごいんですけど！」

行きかう人たちの興奮気味に囁きかわす声は、ベンチに座る男の耳にも届いていた。
瓶底眼鏡のツルを不慣れな様子で押し上げつつ、チラリと数メートル先へと視線を飛ばす。

恋人たちは、ようやく注目を集めまくっていることに気づいたらしい。
照れくさそうに視線を合わせ、立ち去るようだ。

ある程度の距離が開くのを待ってから、男はおもむろに立ち上がり、人込みに紛れるようにして尾行を再開する。

土曜日の遊園地は当然のごとく大勢の来場者で混みあっていたが、見失う恐れはほとんどない。
2人そろって周囲より頭一つ分身長が高い上、否応なく視線を集めてしまう外見をしていたから。

距離を保ちつつさりげなく2人を追い、恋人繋ぎした手にフォーカスした1枚をスマホに収める。

最近の携帯電話は本当に便利だ。
誰も彼が写真や動画を撮っていると気づかないのだから。


――そういえば、２度目って？　仕事がなくなった時期、２度あるって言ってただろ。２度目の原因、まだ聞いてなかったから。

さっき、その問いに彼女はとうとう答えなかった。

ギャラリーの注目に晒されて、答える雰囲気ではなくなってしまったからだが、本音ではホッとしているに違いない。

初対面の人間にペラペラ話せるような内容ではないことを、男はすでに知っていた。