マリオネット★クライシス

「あぁ、こちらこそ。申し訳ない」
耳ざわりのいいテノールで答えたのは、彼よりも背の高い金髪の男だった。

流暢な日本語だが、肌の色、骨格も日本人のものではない。
おそらくヨーロッパ系だろう。

グレーのポロシャツに白パンツ、サングラスというカジュアルスタイルが、“ハリウッドの休日”、とでもタイトルをつけたいくらい似合っている。サングラスを外したら、さぞかし女性を虜にするような眼差しが現れるに違いない。

来日の目的は観光だろうか、それともビジネス?
こんな男が就くのは、どんな仕事だろう?
似合いそうなのは、摩天楼のオフィスか……


そこまで考えを巡らせてしまってから、これはもう職業病かとこっそり苦笑した。
そして「壊れてないといいんですが」と、スマホを差し出す。


その画面に目を落としたのは、全くの偶然だった。


「……え」


自分が見ているものを理解するなり、鼓動が一瞬不気味に動きを止め、体温が数度下がった気がした。


鮮明に映っていたのは、一枚の写真。



それは、自身が追っていた対象……すなわち、ユウとジェイのカップルだったのだ。


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