マリオネット★クライシス
(なんだ、これは? どういうことだ……)
どっと鼓動が忙しくなり、ジワリと汗が滲む。
「大丈夫だと思いますよ。ありがとう」
穏やかな声音と共に手から消えた重みを追い、弾かれるように顔を上げた。
濃いレンズに隠された表情は、定かではない。
だがそこに探るような視線を感じるのは、気のせいだろうか……?
それは、ほんの一瞬の出来事だった。
すぐに金髪の男は踵を返し、離れて行く――……
後ろ姿を凝視しつつ、さっき目にした写真を脳裏に浮かべた。
それは、仲良くハンバーガーを頬張る2人だった。
つまり、ここに来る前、あのファストフード店で撮影したものだ。
しかも彼自身が撮ったものと似たようなアングル――つまり、隠し撮り。
(まさかあいつも、2人を見張ってたってことか?)
情報を処理しきれないまま動揺する男だったが、ふと、その先に連れらしい細身の男が待っていることに気づいた。
こちらはサングラスをかけていない。
金髪の男より少し若め……20代半ばくらい。
明るい茶色に染めているが、彼の方は生粋の日本人のようだ。
一見すると、海外から遊びに来た友人をアテンド中、といった感じか。
しかし……
金髪の男に促され歩き出す直前、茶髪の男がはっきりとこちらを睨んだことに気づき、ドキリとした。
鋭く、決して友好的とは言えない視線――だが、敵意とも違う。
値踏みするような、あるいは牽制するような、と言おうか。
男の頭の中で、次第にある予感が形を成し始め、確信に変わっていく。
彼らはわざと自分にあの写真を見せ、反応を探ったのだ――と。