マリオネット★クライシス
「………」
3人の頭越しに、どうする? って(たぶん)聞いてるっぽいチャコールグレイの眼差しへ、ごめんねって口だけ動かす。
「小坂さん、申し訳ないんだけど彼、アメリカから遊びに来てる友達で、あまり時間が――」
「え、アメリカ人なんですか!?」
「ヤバっ! すごっ!」
「日本人に見えちゃった! え、ハーフとか!?」
テンション爆上がりの3人。
あー墓穴掘ったかも、と唇を噛んだ時にはもう、とびっきりのスマイルを作った小坂さんが、
<初めまして。ようこそ東京へ>
流暢な英語で話しかけていた。
そういえば彼女、帰国子女だったっけ。
<よかったら私、英語で案内しましょうか? 私、日本語より英語の方が得意なんです>
「遥夏ばっかりズルい! ねえ、一緒に写真撮ってもらおうよ」
「あたしもあたしも! インスタにアップしたい! みんなに自慢するー」
2人がスマホを取り出すから、さすがにギョッとした。
「ほ、堀内さん、そういうのはちょっと……」
「はぁ? なんでよ、いいじゃない写真くらい」
「そうよ。自分ばっかりイケメン独り占めって、ズルくない? 大体ヒナタはどうしたのよ」
邪険な日本語に戻って眉を吊り上げたのは小坂さん。
「ヒナタ君は関係な――」
言い返そうとしたわたしを封じるように、コーラルピンクに彩られたツヤツヤリップが意味深にニヤついた。
「ねえ、これってスクープじゃない? 私がこの浮気ツイートしたら、あんた終わるよ?」
「なっ」