マリオネット★クライシス
第1幕 「君、バージンだろ?」
「だ、誰っ!?」
裏返ったトーンで叫んだわたしは、ガバッと振り返った。
2メートル近い柵に囲まれたここは、雑居ビルの屋上だ。
教室くらいの広さしかないから、一目で全体が視界に入って……
「……あ」
あの人か!
入口のところに誰かが座ってる。
最悪……完っ全に油断してた。
ドアの向こう側にまさか人がいるとか、考えるわけないじゃない。
もしかして、わたしが来る前からいたってこと……?
うつむき加減のその表情は、ここからじゃよくわからない。
でも間違いなく、さっきの聞かれてたよね。
どうしよう、ヒナタ君の名前呼んじゃった……と汗を滲ませていたら、再びくくって笑い声。
「すげぇ絶叫」
低いくせによく通るバリトン。
舞台映えしそうな響きだな、と束の間意識を持って行かれそうになって――
「っ……」
その手が弄ぶスマホに気づいてしまい、ギクリとした。
写真、撮られたかもしれない。
それとも動画?