マリオネット★クライシス
第6幕 「このまま走れ!」
どうして、好きになっちゃったんだろう?
トイレの鏡へ自己流のお団子に結い直した髪を映して、重たい息を吐き出した。
口説いてきたかと思えば、イジワルばっかりだし。
こっちのこと散々振り回して、いきなりキスとか……あんな変な奴なのに。
いつの間にか、彼の笑顔一つ言葉一つにドキドキしてる。
ヒリヒリするくらい胸が苦しくなったり切なくなったり。
もう頭の中めちゃくちゃで、落ち着かなくて……
ヒナタ君と付き合ってた時は、こんな風じゃなかった。
プラスマイナスの判断もできたし、周りを見て冷静な行動ができた。
例えばさっきのゲームセンター。
いつものわたしなら、何も言わずに小坂さんにジェイとのデートを譲ったはずだ。
ところが実際は、自分でもドン引きするほど感情的になっちゃって。
きっとあの時のわたしを動かしたのは、嫉妬で、独占欲で……これが、恋をするってことなのかもしれない。
どうして……なんで、こんな日に出会っちゃったんだろう。
こんな日に、恋しちゃったんだろう。
よりによって、別の男の人とセックスすることが決まってる、こんな日に。
「っ……」
ノイズが入ったみたいに、視界がブレた。