マリオネット★クライシス
「チョコバナナお二つですね。ただいまお作りしますので、あちらで少々お待ちくださいねー」
お姉さんからお釣りを受け取り、“あちら”と言われた方向へ目をやった。
ベンチ……じゃないけど、植え込みをぐるっと囲むように座れるスペースが作ってあったので、そこへ腰を下ろして待つことにする。
「はぁ……」
そういえばバナナ、嫌いじゃないよね?
今更? って自分に突っ込んじゃいながら空を見上げれば……朝と同じく、またもや灰色の雲が覆い始めてる。
せっかく晴れてきたかと思ったのに、どうも怪しい気配。
雨、降ったりしないかな。
まぁ、ホテルに入っちゃえば、外の天気なんてどうでもいいけど。
自嘲気味に考えて、微かに頬を歪めた。
「信じられるか? 観覧車の中でキスだぞ?」
「別に、そんなに驚くこと? 結構普通だと思うけど。君はしたことないの?」
突然、植え込みの向こう側に座ってるらしい人の声が背後から流れてきて、ドキッとした。
観覧車の中でキス……?
「あんな丸見えのところで、しかもディープキスとか! 誰がするか!」