マリオネット★クライシス


はぁはぁ……


足元がしっかりした厚底でよかった。
ピンヒールとかパンプスとか、地獄だったよね。


大通りからオフィス街へ、そこから繁華街へ出て……。
もうここがどこだかさっぱりわからない。

わからないまま、ただ手を引かれるまま、やみくもに道を辿る。

はぁはぁ……


ほんと、何やってるんだろう、わたし。

今日初めて会った相手と、全力で逃走中?

こんな映画みたいなことが、実際に起こるなんて。
なんか非現実的すぎて、いっそ笑えてくる。


周囲の景色や音は、次第に曖昧にぼやけて。
自分の呼吸の音と繋いだ手の温度だけが、ひどく鮮明になっていく。

まるで、2人して異世界に飛ばされちゃったみたいな。


はぁはぁ……

これからどうなっちゃうんだろう?
全然、何もわからない。
ただ一つだけ言えるのは――なぜかその時わたしが、幸せを感じてたってこと。
どうしてかな……

肩越しに何度も励ますように微笑んでくれるジェイへ笑顔を返しながら、切なく軋む胸にそっと手を置いた。


ねぇジェイ?
このまま2人で……ほんとにどこか遠くまで行ってしまえたらいいのにね。

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