マリオネット★クライシス
お道化たような声がした。
なんとなくムッとして「真面目に聞いてるの!」って振り返りざま叫んだけど、それ以上は続けられなかった。
腕の下に覗く口元が、全く笑ってなかったから。
息を飲むわたしの前で、少し躊躇いがちにその形のいい唇が開く。
「“お尋ね者”なんて聞いてさ、監視もされてて……ユウは怖くなかった? オレは指名手配中の凶悪犯かもしれないよ?」
それは考えた。
この1日デートは、逃走に利用されてるだけかもって。
けど……
「それでもいい。今日楽しかったことは、嘘じゃないから。演技じゃなくこんなに笑ったの、久しぶりだったし。だから、その……」
言葉に出してみて、改めて自分の中にある想いを再確認する。
わたしはジェイを助けたい。
困った状態にあるなら、放っておけない。
好きだから……って伝えられないのは辛いけど。
それでも――と、突き動かされるようにベッドの上を四つん這いになって近づき、顔を隠したままのその人を上から見下ろした。
「ジェイにお礼がしたいの。もしわたしにできることがあるなら、協力させてほしい」
精一杯の気持ちを込めて告げると、心の声が通じたのか彼が腕をずらし――……澄んだチャコールグレイの瞳が現れた。
「…………」
そのままじぃっと、穴が開くんじゃないかってくらい見上げてくるんだもん、段々頬が熱くなってきちゃった。
おかしいな、演技ならいくらだって、イケメンと見つめ合えるのに……