マリオネット★クライシス
「え、えっと、もちろん、そんな大したことできないんだけど。あの、あっ先に何か飲む!? 部屋に何か、置いてないかな!」
ジリジリ、肌を焼くような沈黙に耐えきれなくて。
「きっとどこかに冷蔵庫あるよね」って身体を起こしかけ――
「っ……」
鋭い舌打ちが耳をかすめるのと同時に。
「きゃっ!?」
後ろから腕を引っ張られ、コロンとベッドに転がった。
直後、サッと視界が暗くなる。
「ななな、なにっ?」
パニック気味に目を上げた時にはもう、自分より大きな、意外にもずっしり重たい身体に組み敷かれていた。
「ジェ、ジェイっ……何、すっ」
「こんな場所で男を煽る、ユウが悪いと思わない?」
「ぁ煽るって……いつ、わたしがっ――……」
両手首を耳の横で固定されてしまい、身動きもできない。
改めてここがラブホのベッドの上だってことを思い出し、心臓がバクバク訳の分からない騒音を鳴らし始めた。
「ジェ、イ」
「オレ自身にもはっきりしてないことはあるけど、オレの予想も含めて、わかる範囲でいいなら話すのは構わない」
「う、うん。もちろん、それでいいよ!」
なんとか健全な空気に持って行こうと、こくこく首を縦にした。
「それでいいから、ひとまずどいてくれると――」
「ただし」
ただし……?
見上げるその顔に浮かんでいたのは――胸を衝くような、やるせない色。
言いかけた言葉を忘れてしまうほど、切なげな表情だった。
「ただし、ユウがエロオヤジのところには行かないって、約束してくれたら、だ」