マリオネット★クライシス
え……エロオヤジ?
何のこと? ってぽかんとしちゃった。
少し考えてから、あぁ馬淵さんか、すっかり忘れてたって頭が動き出す。
思い出すや否や、ツキンと胸の奥に痛みは走ったけど。
それを無視して、のろのろと首を振った。
「それは……できないよ」
本音を言えば、もちろん行きたくない。
でもこれは、わたしだけの問題じゃないから。彼の機嫌を損ねれば、事務所の他のタレントにも迷惑がかかるかもしれないもの。
「オレが頼んでも、ダメ?」
「ジェイ……」
「行かせないって言ったら?」
手首を拘束する指に力がこもり、ギクリと目が泳いだ。
「え……えと、そんな……困る、よ」
「困ってるユウも可愛い」
「もうっ! ふざけないで、放しっ――」
「ふざけてない。……行くな」
聴いたことのない、低い声。
その表情は怖いくらい真剣で。
「っ……」
熱っぽく降り注ぐ眼差しに炙られたせいか、体温がぐんぐん上昇していくような気がした。
「オレ以外の男に抱かれるなんて、許さない」
「っな……なに、言って……」
なんでそんなこと言うの?
それってまるで、わたしのこと……って、ないない。
何考えてるの。
浮かんだ都合のいい想像を打ち消すように、さっと彼から目を逸らした――
「わからない? 好きなんだよ。ユウのこと」