マリオネット★クライシス
「チ、チャンスを掴むために努力するだけよ」
「努力、ねえ。一般論として聞くけど、娘のそんな姿を喜ぶ母親がいるとでも?」
鼻で笑われたような気がして、一瞬怯む。
それでも「反対はされないと思う」って無理やり言い切った。
「お母さんだってよく言ってたもの。芸能界は、キレイごとじゃ生き残れない世界だって」
――何もしなくても仕事がもらえるのは、ごく一部の二世や天才だけよ。栞ちゃんは……もっと努力しないとね。
「わたしがお母さんくらい美人だったら、演技力があったらよかったんだけど……、あいにくわたしには特別な美貌もオーラも、コネもない。何もないわたしが這いあがるには、手段なんて選んでちゃいけないの」
「ユウに何もないなんて、誰が言った? スキャンダルを乗り越えて、今まで芸能界で生きてきたんだろう? そのこと自体が、ちゃんと認められてるって証じゃないのか?」
「そんなの……たまたま運が良かっただけ。偶然子役時代にお世話になったスタッフが関わっていたりとか」
自分の実力なんかじゃない、と緩く首を振る。
「4年前のあの時だって、わたしが大女優なら、お母さんは悪くないってマスコミからかばってあげられた。お母さんは逃げる必要なんてなかった。わたしに力がないばっかりに……」
口を歪めたけど、上手く笑えなかった。