マリオネット★クライシス
「そういうのをね、まぐれ当たり、っていうんだよ。もしくはビギナーズラック? そんな不確かなものに頼るのはさ、プロとしてどうなのかなぁって思うよ。ま、こんなこと君に言うまでもないと思うけど。サルの木登りってやつだし」
(それを言うなら、猿に木登り! お前が登れ!)
「今日中にどうこう、なんて急ぎの案件、どうせろくに精査もされてないんでしょう? 危険すぎるよ。うちくらい大手になると、ちゃんと戦略のプロがいるからさぁ。まず彼らの意見を聞かないと」
ようするに、自分じゃ決定一つ下せない腰抜けなのだ。
こんな男に、どうやって今すぐ“YES”と言わせろと?
「週明けにメンバー集めて検討会議を開く。で、1週間後にお知らせする、それが精いっぱいってとこかな」
(ああああ~~!! イライラするぅ!!)
「……そうですか」
もちろん、キレたりはしない。
潤子は大人の女性である。
美しい唇をわずかに引きつらせただけで、なんとか堪えた。
「じゃ、申し訳ないけどさ、そういうことで。これから会食なんだよねー代理店と」
「……お忙しい所失礼いたしました。では、どうかよろしくご検討ください」