マリオネット★クライシス
第8幕 「っ……もういいっっ!!」
なんとか振り切った……かな。
大通りから少し中へ入った、裏通り。
間口の狭い商業ビルやアパートがギュッと建ち並ぶ道路で振り返り、ジェイどころか誰の姿もないことを確認したわたしは、ようやく肩の力を抜いた。
今日はとことん走る日みたい。
さすがに疲れたなぁ……ていうか、ここどこだろう?
弾む息を整えつつぼやいて、辺りを見回していたら、
「きゃははっ……」
「あはは……」
笑い声が聞こえた。
そちらへ進んでいくと小さな公園があり、一組のカップルがじゃれ合いながら出てくるところだった。
2人のために世界はあるの、的なイチャラブカップル。
いいなぁ仲良さそうだなぁ、って。
知らないうちに自分たちと比べていて、ぶるっと首を振った。
……バカみたい。
自分から逃げ出したくせに、会いたいとか……勝手すぎるでしょ。
瞼の裏が熱くなって――潤んだ視界を瞬いて誤魔化した。
きっと今頃ジェイ、呆れてるよね。
嫌われちゃった、かな。
『何も知らないくせに、勝手な事言わないでよ!』
湿気を含んだ生ぬるい風に吹かれながら思い出すのは、泣いてるみたいな自分の叫び声だった。