マリオネット★クライシス
本当のことを言うと……
ラブホテルの部屋を飛び出してからずっと、ジェイにスキャンダルはデマなのかって言われてからずっと、頭のどこかに“予感”がある。
それはチカチカ、意識の底に見え隠れする映像で……登場するのはお母さんとわたし、そして須藤さんだ。
――ねーお母さん、須藤さん見なかっ……あれ、こんなとこにいたの?
――あら、栞ちゃん。
――ごめんごめん、今行くよ。
飛びのくように離れた2人……
――打ち合わせって、ほんとにわたし、行かなくていいの?
――大丈夫。お母さんと須藤さんでやっておくから。栞ちゃんは、一人でダンスレッスン行けるわね?
――うん、大丈夫だよ。
夕暮れの街に消えた2つの影……
お母さんの、須藤さんの、
お互いを見つめる眼差し、笑顔と、仕草と、2人の距離――……
「ねえ、あなた、今朝宮本さんの所にいたでしょう?」
突然。
高原を吹き抜ける風のような、重苦しい空気を払う涼やかな声がした。