マリオネット★クライシス
何しろわたしは一人っ子。
妊婦さんのお腹に触ったことなんてないし、まさに未知との遭遇って感じで……
「こ、壊れちゃいませんかっ? 変な菌が感染ったりとか!」
ヤバい電波出てたらどうしよう!
「わたしが使うとなぜか電化製品の調子悪くなるんですよ!」って意味不明の台詞をアワアワ並べたてると、ヴィーナスの笑い声が弾ける。
「平気平気。旦那さんなんて、しょっちゅうベタベタしてるから」
「そりゃパパは特別――っあぁっ!」
思わず叫んじゃった。
だって今、手に伝わってきた……ぐにゅって、て、これは……
「うぅ動きました……っ」
そっと離した手の平に、じぃいって魅入る。
ほんとにいるんだ、このお腹の中に別の命が。
生まれてくるんだ、新しい命が……
なんて表現したらいいんだろう。
それはもう、思いがけない程の大きな感動だった。
「ほら、やっぱりユウちゃんが好きだって。人によっては、全然動かないのよ?」
「そうなんですか? うわ……なんか、嬉しい……」
じんわり涙ぐんだわたしを見て、奈央さんが「やだ、大げさね」って吹き出して。
さっきまでの憂鬱を束の間忘れて、一緒に笑っちゃった。