マリオネット★クライシス

一生懸命唱えれば唱えるほど、風船みたいに不安が膨らんでいくのはなぜだろう?


「自分の子どもに嘘なんて、つきませんよね? 母親なら」


囁きと共に、縋るような視線を隣へ向け――じっとこっちを見つめる黒目がちな瞳とぶつかった。

そこに同情や好奇心といったものが浮かんでいないことに、ちょっとホッとする。

その眼差しは、とても静かだった。

否定するでもなく、肯定するでもなく、ただわたしを受け止めてくれる。
真摯に、平らかに、穏やかに、

まるで、曇りのない鏡のように――……


――ねーお母さん。


「……っ」

その時、フラッシュみたいに脳裏を何かが横切った。


頭のどこか、ぼんやりと覆っていた霧みたいなものが、瞬間、薄くなって……あの“予感”がぐっと浮上する気配を感じる。

何かを思い出しそうになる――

< 208 / 386 >

この作品をシェア

pagetop