マリオネット★クライシス

『あんなのデマよ』


あの言葉は嘘だった。


『すぐに帰ってくるわ』


じゃあ、あの言葉も嘘で。
つまり……“間違っていた”のだとしたら……



――お母さん、わたし、吹奏楽部に入っちゃダメ? うちの中学、全国でも有名なんだよ。ユーチューブで観たら、すごくカッコよくて……

――部活なんてやってる暇あるわけないでしょ? 子役から脱皮できるかどうか、っていう大事な時期なのよ? 栞ちゃんの取り柄は演技力しかないんだから、それをもっと磨くようにお稽古しなくちゃ。さもなきゃ他の子たちにどんどんいい役取られちゃうわ。

――でも、社長は学校優先でいいって……

――いつも言ってるでしょ、栞ちゃんは、お母さんの言うことだけ聞いてればいいの。そうしたらちゃんと上手くいくんだから。お母さんが今まで間違ったこと言ったこと、あった? ないでしょ? あなたに必要なことは、お母さんが全部わかってるんだから。

――……はい、お母さん。


――いいこと? あなたは大女優になるの。じゃなきゃ、あなたを生んだ意味がないわ。



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