マリオネット★クライシス

ガって音がしそうな勢いで、背後から(・・・・)伸びてきた腕に乱暴に抱きしめられた。

「……へ?」


羽交い絞めにするみたいに包み込む強引な腕――え、固い?


しかも。
頬にひんやり感じるこれって……ピアス?
奈央さんて、ピアスしてたっけ?

え? え?

混乱したまま恐る恐る視線を動かして、至近距離にあったサラサラの黒髪と長いまつ毛に、そのままピキンて固まる。

だってその人を、わたしは知ってる。
伏せた瞼の向こうの色がとても美しいことも――


「ジェ、ジェイっ!? な、なんでっ……」

どうしてここにいるの!?
いつからいたの!?

もしかして今の、聞かれてた!?

ドッとパニックに襲われてジタバタするわたしを戒めるように、拘束する腕に力がこもった。

「オレがいる、ずっとそばにいる。言っただろ、好きだって。ユウが好きだ。愛してる。何度でも言ってやる。世界中に言いふらしてやる」


あ、愛……って、でも、でも……椿さんのこと……

いいの?
自惚れちゃうよ……?

「ジェイ、あの」
「だから」

狼狽えるわたしの耳たぶへ、火傷しそうなほど熱い吐息が触れた。


「だからこの先泣く時は――オレの腕の中だけにして」


< 215 / 386 >

この作品をシェア

pagetop