マリオネット★クライシス
「実は、今店内で社長を待ってる男ですが――、まさに、この2人を監視していたんです」
宇佐美はノートパソコンの画面を潤子へと向けた。
映っているのは寄り添う若いカップル。
それがジェイとユウであることを認め、軽く息を飲んだ。
「……監視?」
「どうやら彼は」
ジェイの方を、長い指がトントンと指す。
「何か事件に関わっている、もしくは関わっているのではないかと疑われているようなんです」
「事件ですって?」
綺麗に描かれた眉が、ぐぐ、と寄った。
犯罪者だとでもいうのだろうか。
「それで、彼を追っていた者たちが僕に接触してきた。連中と同じく、僕も2人をマークしていたから」
サラリと告げられた事実に、視線を上げた。
宇佐美が関わったという“事情”やら“別件”やらの内容が、なんとなく飲み込めてきたのだ。
「その男は僕の名刺を見るなり、代表者と話がしたい、つまりあなたから話を聞きたいと」
「へぇ……話、ね」
一体どんな類の話なのやら。
嫌な予感しかしないのだが。
「とにかく会ってくるわ。ここで待っていてくれる?」
「はい。社長――」
呼び止めた上司を、奥二重の瞳が意味深に見つめる。
「僕の方からは、何もしゃべってません。スカウトできそうな子を探していただけで、彼については何も知らないと言っておきました」
「……わかったわ」
その方がいいだろう。
潤子は慎重に頷き、店の入口へと歩き出した。