マリオネット★クライシス
「……なるほど、こちらの男の子を探してらっしゃるわけですね」
宇佐美から聞いておいてよかった。
潤子は焦ることなく頷き、運ばれてきた紅茶を口に含んだ。
テーブルの中央に置かれているのは、ライアンのスマホだ。
画面にはもちろん、ジェイとユウが映っている。
「確かにとてもハンサムな子ですけど、残念ながらうちのタレントではありません。何もお手伝いできないと思いますわ」
困った様に眉を下げつつ、誠実さを前面に出して言う。
大抵の交渉はこれで行けるし、男の場合は自分に落ちてくれるのだが、今日の相手はわずかに目を細めただけだった。
「宇佐美さん、って言ったかな。僕をここに連れてきてくれた社員の方。彼は、このカップルに随分興味を持っているようでした。尾行していたようにすら見えた。なぜですか?」
「あぁ、それは声をかけるタイミングを探していたんだと思います。スカウトの練習にね。彼はまだこの業界の経験が浅いので、休日には努めてスキルを磨くようにアドバイスしています」
女優並みの演技力で落ち着いて言うと、目の前の麗しい唇がわずかに弧を描いた気がした。
「とぼけるのは止めていただきましょう。ジェイのこと、ご存知ですよね?」