マリオネット★クライシス
「ジェイっていうんですか、彼? 宇佐美から聞きましたけど、事件だかなんだかに関わりが、とか。ライアンさんは、警察の方なんですか?」
淡々と、質問に質問で返す。
怒りだすかと思ったが、ライアンは冷静に首を振った。
「我々は、ごくプライベートに調査をしているだけです。彼の行動や状況が疑わしいと主張する人たちの依頼を受けてね」
「はぁ」
生返事を返しながら、潤子は気づいた。
彼が“我々”という複数称を使ったことに。
つまり、彼の背後には誰かが、あるいはグループ、組織のようなものが控えている、ということだ。
探偵とか興信所の類だろうか?
好奇心は大いに疼いたが――
「ごめんなさい、やっぱりお役に立てそうにありません。残念ですけど」
丁寧に、しかしきっぱりと告げる。
深入りは禁物だとわかっているからだ。
すると。
吐息をついたライアンは、おもむろに胸ポケットからもう一台のスマホを取り出す。
「これは我々が手に入れた彼のスマホです。追跡用のアプリがインストールされたことを知ると、あっさり手放しました。そこから考えておそらくこちらは、日本に来てから用意した一時的なものでしょう」
先ほどのスマホに並べるようにテーブルへ置き、潤子を伺った。