マリオネット★クライシス
第9幕 「自分に嘘をつくのはやめようと思ったんだ」
ジェイにバックハグされたまま、だいぶ泣いてた気がする。
それでもようやく呼吸が戻り、興奮も落ち着いてきて……叫んだおかげか、随分気分はすっきりしたんだけど。
今度はなんだか……この密着具合が気になり始めちゃった。
――オレがいる、ずっとそばにいる。
――ユウが好きだ。愛してる。
思い返してみると、結構すごいこと言われたよね。
そういえばラブホテルでもあちこち触られちゃった、し、
どどどうしよう、顔見れないかもっ……
脳内再生されたあれやこれやで、羞恥心マックスになっちゃって。
もはや腕の中で彫像と化すわたし――そこでふと、視界の隅を奈央さんの姿が掠めた。
やだ、何やってんの!
すっかり自分の世界に浸っちゃった!
声をあげようとしているのがわかったのか、目が合った彼女は悪戯っぽく人差し指を唇へ。
そしてその手をヒラヒラ振ると、ニッコリ笑って踵を返した。
「あ……行っちゃう……」
「ん? あぁ彼女のこと?」
そう、って頷いて、遠ざかっていく背中を見送る。
ほとんど初対面だったのに。
面倒な話聞かせちゃって、泣いて叫んで……申し訳なかったな。
でもここで彼女に会えなかったら、きっとジェイにも会えなくて、今頃一人で馬淵さんのところに行ってたはず。
いつか改めて、お礼と謝罪と、できる機会があればいいんだけど……。