マリオネット★クライシス
「ユウ……その、ごめんな?」
ふいに申し訳なさそうな声が降って来て、わたしは腕の中で身じろいだ。
「ん? 何のこと?」
「ラブホテルでさ、散々勝手な事言ったけど……お母さんとの別れでずっと苦しんできたのはユウなんだよな。その気持ち、もっと考えるべきだった。ほんとにごめん」
力ないその口調からは自分を責めてる空気が伝わってきて、「ううんっ謝らないで、ジェイは悪くない!」って全力で否定しちゃった。
「今考えるとね、ジェイに言われてすごく腹が立ったのは、それが本当のことだったからだと思う。自分でもうっすら感じていたことをはっきり言われて、動揺しちゃったの。むしろお礼言わなきゃ。過去と向き合うきっかけをくれてありがとうって」
口に出してから、その明るいトーンに自分でもびっくりした。
溜まってた言葉や思いを、涙と一緒に全部外に出したのがよかったのかな。
なんだか身体も軽く感じるし、視界もクリアになったような……って、気のせいかもしれないけど。
たぶん、きっと、もう大丈夫。
そんな気がしたんだ。
「ユウ」
甘い声がわたしを呼んで――顔を上げると、優しい眼差しに囚われた。
見つめ合う2人の距離が、ゆっくりと近づいていく。
偽名を呼ばれてさえこんなにドキドキするんだよ?
本名をこの声で呼ばれたら……どうなっちゃうんだろう?
考えながら、わたしはそっと瞼を下ろし、て――……
「……実はさ」
触れる直前、吐息に紛れてつぶやきが聞こえ、慌ててパチッと目を開けた。
「いろいろ言ったけど、あれほとんど……オレ自身のことなんだ」