マリオネット★クライシス

「奈央さんっ! 奈央さん!」

転がるように駆け寄ると、座り込んだ奈央さんが浅い呼吸を繰り返しながら目線だけを持ち上げる。

「ユウ、ちゃん。やだ、ごめんね、いい雰囲気のとこ邪魔しちゃって……」

顔色が、よくない。

「そんなこと気にしないでくださいっ気分悪いんですか?」

悪阻ですか、って聞こうとしたところで目に入った彼女の下半身に、思考回路は一時停止。
続けて、ざぁって血の気が引く音が聞こえるような気がした。

ふふ、服が濡れてる……これってまさか……

「あれ……破水、かな。まだ先だと思ってたんだけど……」

破水って、聞いたことある。
つまり、赤ちゃんが生まれるってこと!?

どどど、どうしようっ!
こんな街の真ん中で!?

「ごめんね、ユウちゃん。申し訳ないけど、そこに入ってる携帯で旦那さんに電話してもらってもいい?」

「ははははいっ」

そうだ、旦那さん近くにいるんだった。
すぐに来てくれたら……


トートバックの内ポケットに、スマホはすぐ見つかった。
教えられたパスワードを入力してロック解除……しようとするんだけど、あぁこら、落ち着けっ! 指が震えて……っ。

早く、早くしないとっ……


「オレがやる」

「ジェイ!」

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