マリオネット★クライシス
タクシーは、ジェイのおかげでほどなく到着。
座席濡れちゃうかなってことが気がかりだったけど、事情を知った運転手さんがビニールシートを敷いてくれて、ホッとした。
最近は、妊婦さん用に用意してるタクシーも多いんだって。
「じゃ、ジェイは拓巳さんの方よろしく」
「了解。すぐに追いつくから」
ご主人にはやっぱり連絡がつかず。
結局ジェイに、その取引先へ直接向かってもらうことになった。
そして、わたしと奈央さんだけを乗せたタクシーは、さっそく病院を目指して走り出したんだけど――
「痛みはどうですか? あっ、どうぞ、もっとわたしの方に寄り掛かっていいですよ? 楽にしてくださいねっ」
車体が揺れるたび、もうドキドキハラハラ!
だって身近に妊婦さんがいたことなんてないもん。
本番前だってこんなに緊張したことないってくらい、手に汗かいちゃったりして。
「ありがとユウちゃん。ほんとにごめんねぇ、変なことに巻き込んじゃって」
それに引き換え、最初の動揺が過ぎたのか、奈央さんは落ち着いてる感じだ。
「とんでもないですっ。逆に、でしゃばったことしてすみません」
「ううん! こうして話す相手がいるだけですごく心強いわ。一人だとマイナスなことばっかり考えちゃうもの。とりあえず陣痛はまだ始まってないし、大丈夫だと思うんだけど」