マリオネット★クライシス
幕間⑨ 都内某所・車内
「……え、は?」
『だからっ! 先ほどの話だよ、お受けすると言っている』
「えっと……はぁ」
さっきからマヌケな声しか出ない。
スマホのディスプレイに目を落とす。
着信相手はあの石頭で間違いない。
『もろもろそっちで全部決めてくれていいし、こっちは全面的に飲むから。勝手にやってくれていいよ。じゃあよろしく』
通話の切れたスマホを持ったまま、潤子は運転席で呆然と瞬いた。
全部決めていい? 全面的に飲む?
(一体どういうこと? よく似た声の別人に騙されてるのかしら)
「社長、どうしました?」
後部座席でパソコン作業に熱中していた宇佐美が、不思議そうに顔を上げた。
「高木が……あの件、OKしたわ」
「アクトライツの、高木社長ですね? 例の、ライアンさんに頼んだ件で?」
えぇ、そうよ、とつぶやいて、ついさっきカフェで出会った男のグリーンアイを脳裏に浮かべた。