マリオネット★クライシス
トントン、と指先でハンドルを叩き、とっちらかる思考をまとめようと苦心する。
もう一度ジェイが連絡をくれたなら、相談もできるのだが。
自分が知っているのは、すでに彼が手放した携帯の番号だけ。
これじゃどうしようもない。
「どうします? 相手はこっちの要求をクリアしたんですよね?」
「……どうしようかしら……」
幸か不幸か、これで今夜の障害はほぼすべて取り除かれた。
あとはあの子が約束を守るのを見届けるだけ。
このまま何もなかったふりをして勝ち逃げしてしまいたい気持ちも、確かにある。あの美貌の男はどうも得体が知れないし……
RRRRR……
タイミングよく鳴り響いたスマホに目をやれば、先ほど登録させられたライアンの携帯から着信だ。
時間を無駄にしない主義らしい。
自分の思惑を見透かされた気がして舌打ちしながら、渋々ディスプレイに指を滑らせた。
『ハロー美人社長殿、僕の仕事は気に入ってもらえたかな?』
親し気な、しかしこちらへのリスペクトも感じさせる響きは対等な関係をアピールしており、好感が持てる。
その瞬間、潤子は自分の中にくすぶっていた勝ち逃げプランを捨て、直感に従うことにした。
彼を、こちらの味方につけるのだ。