マリオネット★クライシス
「やっぱりオレも一緒に行く」
「ダメだよ、関係者以外立ち入り禁止なんだから」
「オレも関係者ってことにすればいい」
「そんな、むちゃくちゃな……」
わたしたちが押し問答しているのは、六本木にあるABCテレビ前。
顔パスで中に入れる有名人と違い、収録予定のないタレントが中に入るには許可証が必要で、それは局内の人から話を通してもらうしかないのよね。
「だって危ないだろ。もし相手が怒り出したらどうするんだよ」
「他にも人いっぱいいるし平気だってば」
そう、これからわたし、馬淵さんに会って直接伝えるつもりなんだ。
枕営業ってやり方は間違ってると思うし、思い通りになるつもりはないって。
もちろん、今後についてはかなり厳しいものになると思う。
今度こそ女優生命の危機、ってやつかもしれない。
でも……今はもう、それでいいやって気がしてた。
女優を続けたいのかわからなくなっていたし、それに……自分のこと、もっと大事にしなきゃって思ったから。
「とにかく、オレは絶対――」
「ねぇジェイ。わたしたちって、奇跡から生まれたんだよね」
噛みしめるようにつぶやくと、ジェイがピクッと動きを止めた。
そんな彼に視線を合わせ、精一杯の言葉を探す。
「さっき病院で、そう思ったの。人の命って、奇跡から生まれて……そして、奇跡の連続で、人生ってずっと続いていくんだなって。お母さんに対して言いたいことはもちろんいっぱいあるけど、それだけは間違いないって思うから。この命も身体も、いい加減に扱ったりしないよ。だから――」
溢れそうになる感情にまかせて、えいって背伸びした。
一瞬だけ、ぶつけるみたいに唇を合わせる。
あんまり上手なキスじゃないけど、この気持ちが伝わりますように、って思いを込めて。
「抱いてもらうなら、大好きな人じゃないとね」