マリオネット★クライシス

なんとなく大胆な気持ちになり冗談めかして覗き込むと、バッて腕を上げ口元を隠したジェイが、慌てたように視線を泳がせた。

「~~っ……ユウ、それって演技?」
「それ?」
ん? なんか顔、赤くない?
街灯のせいかな?

「そういう、かわ、可愛っ……ぐぅ」

呻くようにもごもご、何かをつぶやいて――

「わかったよ。ここで大人しく待ってるから……その代わり、今夜は覚悟しとけよ」

最後のやつは、聞こえなかったことにしよう。


◇◇◇◇

裏口から入り、警備室を通じて話をしてもらうと、わたしはすんなり会議室へ案内された。

パイプ椅子に座り、まだ仕事が終わらないという馬淵さんを待つ。

局内がいつもより静かだった気がするけど、時間のせいか、それとも……

「そっか、今夜は音楽祭だっけ」

ABC音楽祭は、半年に一度ここからすぐのところにある超高級ホテルを使って開かれる、局を上げての大イベントだ。
ヒナタ君も出場するやつ。今朝言ってたよね。


「夜と言えば……」

ジェイって最初、用事があるとか言ってなかった?
わたしのためにドタキャンさせちゃったら、申し訳ないな……さっき聞けばよかった。

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