マリオネット★クライシス

(遅い……ちょっと、遅くないか?)

彼女が中に入ってから、30分以上は経つ。
心配しすぎだろうか。

次第に強くなっていく雨脚。

濡れそぼった前髪を乱暴にかき上げて、ジェイはイライラと裏口の周囲を歩いた。
まるで檻の中で苛立つ猛獣のように。

(まさか、何かあったんじゃないだろうな……)

いっそのこと中に入って聞いてみようか。
どうせもう監視カメラにバッチリ映ってることだろうし。

ただ、相手の名前がわからない。
エロオヤジ、とだけしか話してなかったことを思い出し、唇を噛む。

あと5分だ。
5分待って戻らなければ、エロオヤジと連呼しながら強行突破してやる。
警察に通報されるだろうが、どうでもいい。
騒ぎになって彼女が出て来てくれるなら、それに越したことはない。

(どうしようもないな、オレは)

必死になりすぎていることを自覚しながら、苦笑した時だった。


パッパーーーー!!


甲高いクラクションが鳴り響いた。

数メートル先、テレビ局の地下駐車場から強引に一台が出ようとして、ぶつかりそうになった車から鳴らされたらしい。

< 263 / 386 >

この作品をシェア

pagetop