マリオネット★クライシス
(遅い……ちょっと、遅くないか?)
彼女が中に入ってから、30分以上は経つ。
心配しすぎだろうか。
次第に強くなっていく雨脚。
濡れそぼった前髪を乱暴にかき上げて、ジェイはイライラと裏口の周囲を歩いた。
まるで檻の中で苛立つ猛獣のように。
(まさか、何かあったんじゃないだろうな……)
いっそのこと中に入って聞いてみようか。
どうせもう監視カメラにバッチリ映ってることだろうし。
ただ、相手の名前がわからない。
エロオヤジ、とだけしか話してなかったことを思い出し、唇を噛む。
あと5分だ。
5分待って戻らなければ、エロオヤジと連呼しながら強行突破してやる。
警察に通報されるだろうが、どうでもいい。
騒ぎになって彼女が出て来てくれるなら、それに越したことはない。
(どうしようもないな、オレは)
必死になりすぎていることを自覚しながら、苦笑した時だった。
パッパーーーー!!
甲高いクラクションが鳴り響いた。
数メートル先、テレビ局の地下駐車場から強引に一台が出ようとして、ぶつかりそうになった車から鳴らされたらしい。