マリオネット★クライシス
RRRR……
鳴り出したスマホが、潤子からの着信を告げた。
躊躇いながら画面をタップすると、珍しく狼狽えた口調が耳に飛び込んできた。
『宇佐美君、どうしよう……あの子、まだ来ないわ』
ガヤガヤと騒がしいバックに負けないよう、声を張り上げている。
『ほんとに来ないつもりだったら……最悪、あなたの作品で切り抜けるしかないわね』
息を飲み、USBメモリに目を落とした。
「社長……しかしこれは……ほとんど彼女にとってだまし討ち、のような仕打ちになると思うのですが」
最初の電話では、まさかこんな風に発表する予定があるなんて、彼は一言も言わなかった。
彼自身も、想定していなかったのではないか。
なにしろ今日の今日、というありえない展開の速さである。
自分だって騙されたような心境なのだ。
知らずに被写体となった栞は、後から知った時、どれほどショックを受けるだろう。
無意識に薬指の指輪に触れつつ考えていた宇佐美の耳に、『だったら、何?』と、少々キツめの声が聞こえた。