マリオネット★クライシス
えんじ色のエプロンドレス……メイド服っぽいものを着てる。
50歳くらい、だろうか。
「お体の具合はいかがですか? もし調子がお悪いようでしたら、すぐにドクターを呼びますが」
「あ、の……?」
言葉に詰まる様子でこっちの言いたいことを察してくれたのか、その人は「あらあら、わたくしとしたことが、申し遅れました」と破顔した。
「シェルリーズホテルでメイドをしております、門脇麻里と申します。マリーとお呼びくださいませ。今夜は栞様のお世話を仰せつかっておりますので、どんなことでもなんなりとおっしゃってくださいませね」
「はぁ……えっとあの、わたし、まだシェルリーズホテルにいるんですか?」
これがホテルの中?
目を剥くわたしを眺め、マリーさんはニコニコと目尻に皺を寄せる。
「一般の客室とは少々趣が異なりますから、戸惑われたんですね。こちらはプレジデンシャルスイートでございますよ」
「ぷ、プレ……?」
「プレジデンシャルスイートです。デラックススイート、ロイヤルスイートのさらに上、最上階にございまして、当ホテル最高ランクのお部屋でございます」
「はぁ……」
よくわからないまま頷き――そこでやっと気づいた。
――お寛ぎの所失礼いたします。ルームサービスをお持ちいたしました。
間違いない、馬淵さんと一緒の時に聞いた、あの声だ!
じゃあ彼女は、ジェイと一緒にわたしを助けてくれて……
「ご安心ください、栞様が気を失っていらしたのはほんの1時間程度ですから。お体の調子がよろしいようならお食事をお持ちいたしましょうか? こんな真夜中まで何も召し上がらなかったら、さぞお腹がすいて――」
瞬間、血に染まったシャツが脳裏に閃き、ぞくっと恐怖が過った。