マリオネット★クライシス
「あのっジェイは? ジェイはどこですか? ひどいケガ、してたでしょう? 病院に行ったんですか?」
何かがぶつかって砕け散るような、すごい音がしてたもの。
直接見てないけど、あの時きっと何かあって……
居てもたってもいられず質問を遮っちゃったわたしを、特に気を悪くした様子もなく見つめ返したマリーさんは、「ジェイ?」とふっくらした頬に手を当てる。
それから、「あぁ坊ちゃまのことですね!」と頷いた。
は? ぼっ、ちゃま……?
聞き違いかな、と眉が寄ってしまった。
「あらやだ、申し訳ありません。つい昔の癖が抜けませんで。もちろん、ジェシー・リー様のことでございます。当ホテルを経営しております、リーズホテルズジャパンのCEO李偉平氏のご子息の」
「CEOの、ご子息……?」
シェルリーズの経営……?
何……それ。
そんなの知らない。
「ジェシー様でしたら、大丈夫でございますよ。お怪我なんてされていませんし、あぁ、論より証拠でございますね。ご確認になりますか?」
人違い、だよね?
自分に言い聞かせつつ、にこやかなその視線を辿れば……テレビがあった。
「御覧になりたいかと思って録画しておいたんですよ。先ほどちょうどジェシー様の出番がございまして」
出番って……なんのこと?
「別室で観ておりましたが、本当に素晴らしかったですわ! 栞様も惚れ直すこと必至でございますよ!」
ウキウキと興奮気味に話しながら彼女がリモコンを操作すると、間もなく大型画面いっぱいに現れたのは正装した2人。
有名なコメディアンと、ABCの女子アナだ……