マリオネット★クライシス
「停まって、ねえ降ろして! こんなの頼んでない!」
有無を言わさず走り出してしまった車に、思わずカッとなっちゃった。
だってこのまま一緒にいたら、ひどい恨み言を口走ってしまう……
そんな自分が怖くて、無理やり飛び降りようかと身を乗り出したんだけど――強引な腕の中へ、逆に引き寄せられてしまった。
「はなして、ってば……」
「ダメ」
だからっ……そういう甘甘なやつ、困るんだってば!
全部お芝居だってわかってる。
わかってるんだから。
体温が伝わって絆されそうになる心を懸命に戒めつつ、往生際悪く身体をよじった。
その拍子に……
引っ張ったブラウスの襟ぐりから、見えてしまった。
鎖骨の下、程よく筋肉のついた滑らかな肌が。
「え、ない……タトゥー……」
絶句するわたしの視線を追い、「タトゥーって……あぁあれか」と、決まり悪そうな目が泳ぐ。
「あれは、タトゥーじゃない」
「タトゥー……じゃない!?」
「ただの、ペインティング。雨に打たれたし、転んだし……で、いつの間にかとれたらしい。気づいたら、結構すごい恰好になってたな。ゾンビみたいに」
とれた……ペインティングの赤い椿……もしかして、それがあの血の正体!?