マリオネット★クライシス
ダメだ、冷静にならなきゃ。
冷静に――と唱えるそばから、胸の内で何かがキリキリ悲鳴を上げる。
怒りと、哀しみと、諦めと……
アンバランスな感情に、ぐらぐらと気持ちが揺さぶられ――
「……ファントムって何? 歌手ってどういうこと? 何も聞いてない。MVの話もっ……御曹司だってことも……何もっ」
詰るような胡乱な言葉が、ついにぼろぼろこぼれ出す。
わたしはプロだ。
デートが仕事だったなら、文句を言っちゃいけないんだろう。
そんなことわかってる、けどっ……
今日だけはダメだ。
いろんなことがありすぎて、感情が涙と一緒にあふれ出すのを、どうしても止めることができない。
「す、好きって……なんでキスしたの? 本気でドキドキして……人の気持ち弄んで、楽しいっ!? 全部演出って、MVって、何よそれ……ふざけないでよ! 御曹司様の気まぐれに付き合うほど、こっちはヒマじゃないのよっ!?」
言いたいことが多すぎて、何から言っていいのかわからない。
とにかく思いつく端から叫んで、目についた彼の上半身、所かまわずめちゃくちゃに叩いてやった。
ジェイは抵抗しなかった。
「ごめん。全部オレが悪い。全部ちゃんと説明するから」