マリオネット★クライシス

悲し気に言ったきりされるがままの彼の胸を、思いっきり押しやる。

「知らないっ何も聞きたくないっ」

あがった息のまま涙交じりに首を振って、拒絶の意思表示をする。
今頃謝ったって遅いんだから、って。

癇癪を起した子どもみたいだと思ったけど、仕方ないじゃない。

だって、だってわたし……本気でジェイのこと、好きになっちゃったんだよ?

今更全部嘘だったとか言われたら、
この気持ち、どうすればいいのよ?
こんな、胸が焦げるような苦しい気持ち……

ボロっとまた新しい涙を流しながら、心の中でつぶやいた。
そこへ。


「ほら、だから言ったじゃないか。最初に彼女に了解を取るべきだって」

呆れたような声が聞こえ、ヒッてフリーズ。


え、え、誰?
ガバッと顔をあげたら、ルームミラー越し、運転席に座る男性と目が合った。

「ごめんね、あのMV作ったの僕なんだ。宇佐美理久って言います。えぇと、これでわかるかな?」

申し訳なさそうに眉を下げ、その人が胸のポケットから取り出したのは……


「あ」


瓶底眼鏡……マンガに出てきそうなそれには、確かに見覚えがあった。
遊園地でわたしたちの後ろを歩いてた人だ。

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