マリオネット★クライシス
「最初の予定では、翔也にユウを音楽祭へ連れてきてもらって、そこで紹介してもらう段取りになってた。どうしても直接、会いたくて。音楽祭のオファーも、そのためにOKしたようなものだし」
そ……それってつまり、わたしのために来日したってこと?
え、えぇ?
「ところが、朝から予定は狂いっぱなし……まぁ、結果としてはオレにとって随分ラッキーな展開になってくれたけど」
意味ありげに小さく笑われて、瞬く間に自分の言動を思い出す。
お、思いっきり誘ってたよね、わたしの方から。
うわ……めちゃくちゃ恥ずかしい……
「ずっと考えていたのは、casting couch――枕営業なんて馬鹿な真似をどうやったら止めてくれるだろうってことだった」
表情と口調とを改めて、彼が言う。
怒ってたはずなのに。
許せないって思ってたはずなのに……
どうしてだろう。
今胸の内をどんなに探しても、そんな感情は見当たらない。
この眼差しのせいかもしれない。
わたしだけを真っすぐ見つめてくれる、柔らかな視線。
信じたくなるんだ。
決してわたしを騙そうとか嵌めようとか、そういうつもりだったわけじゃないって――
それからジェイは、MV制作の本当の意味を話し始めた。