マリオネット★クライシス
「渋谷で会った時、まず気になったことがあって……“何も持ってない”とか、“デートしてもつまらない”とか、自分のことそんな風に言ってただろ。つまり、ユウは“女優じゃない素の自分”に対して、評価が低すぎるんだ」
それは……うん、言ったよね。
『わたしなんかとデートしてもつまらないよ?』って。
だって、陰キャな人間と一緒にいたって大して楽しめないでしょ……と口にしかけて、確かに自己評価低いかも、ってドキリとした。
そんな様子に気づいたのかどうか、ジェイは優しい手でわたしの髪を撫でながら、言い含めるように穏やかに続ける。
「女優じゃなくなったら、今よりもっとつまらない人間になってしまう。だから何が何でも女優でいなくちゃいけない。たとえそのために身体を犠牲にしても――……そう思ってるんじゃないかなって考えた。まぁ実際はお母さんのことが影響してたわけだけど、あの時はそこまでわからなかったから」
「…………」
口を開いたけれど、何も反論できなかった。
全部その通りだったから。
「それが間違いだってわからせたくて、静さんのマンションでユウが着替えてる間に理久に撮影を頼んだんだ。映像として客観的に見ることで、自分の魅力に気づいてくれたらいいなって」