マリオネット★クライシス

――あなたは大女優になるの。じゃなきゃ、あなたを生んだ意味がないわ。


わたしには、演技しかないって思ってた。

女優じゃない自分には、なんの価値もないって。
だから、どんなことをしてもしがみつかなきゃって。

けど、もしかしたら。

認めてあげても、いいのかな……?
そのままで、いいんだよって。


――これだけは忘れないで。あなたにはあなたの人生がある。未来がある。それは、お母さんのものじゃない。あなたのものよ。


「っちょ、っと……見ないで。こっち……」

抵抗はあっさりスルーされて。

「だから言っただろ、泣く時は――ここだって」


温かな言葉と共に広い胸の中へ包み込まれ、馴染んだ温度と香りに全身の力が抜けてしまう。

瞬く間に、視界は涙色のヴェールに覆われてしまった。

条件反射(パブロフの犬)って、こういうことなのかな。
抱きしめられたのはまだ数えられるほどなのに……この場所はもう、わたしにとって、なくてはならないものになってるみたい。


「っ……ぅ、え……っ……」

止まらない涙をそのままに。
わたしはただぐしゃりと、彼の服を握り締めた。

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