マリオネット★クライシス
「ライアン様っ大変でございます! 栞様が、お部屋にいらっしゃらなくて……坊ちゃまにお知らせしなくてはと思ったのに、電話に出ないんです。一応メッセージは送っておきましたが、でも……」
駆け込んでくるなりまくしたてるマリーの青い顔へ、「大丈夫だよ、落ち着いて」と微笑みかけ、簡易の椅子を勧めた。
「今夜はマリーも大変だったね。いろいろ協力してくれて、ありがとう。あの男はどうなった?」
「あの……あぁ、馬淵ですか?」
嫌悪感も露わに眉をしかめ、そこへドスンと腰を下ろす。
「かすり傷程度ですよ。訴えてやると息巻いておりましたから、薮内様――音楽祭の責任者の方に事情はお伝えしました。栞様を部屋に連れ込んだ際の防犯カメラ映像も一緒にお渡しを……って、そうです、栞様がお部屋から出て行ってっ」
「彼女ならジェイと一緒にいるよ」
「……はい?」
立ち上がったライアンはモニターの一つに歩み寄り、キーボードに何かを打ち込んだ。
画面に現れたのは、黒いバンに押し込まれる栞。
続けて、その後ろから素早く乗り込むジェイが映し出される。
「あら、あら……まぁよかった。心臓が止まるかと思いましたよ」
ホッとしたように肩を上下させた。
「でも一体どちらに行かれたんでしょう。今夜はお戻りになるのかしら。せっかく栞様のためにお部屋をお取りになったのに……」
プレジデンシャルスイートなんですよ、と聞き、ライアンも目を瞠った。
「その部屋って、国賓の接待に使う、あれだろう?」