マリオネット★クライシス
「さようでございます。ほんとにご立派になられましたわ」
そう言うと、自分のことのように誇らしげに小さな胸を張った。
「御曹司という特権を使うことなく、正規のルートでご予約になったんですよ。コンシェルジュすら、今夜のゲストが社長のご子息だとは気づいていません。わたくしも、ご本人から連絡をいただくまでは、存じ上げませんでした」
ライアンは再び椅子に腰を下ろしながら、ピュウっと軽く口笛を吹く。
「あの部屋をブッキングできるだけの金と力を手に入れた、そういうことだね。たった18で、まぁ生意気な」
「なんだか嬉しそうでいらっしゃいますね」
「……そうかな? ま、そう見えるなら、そうかもしれないね」
我知らず緩めた頬に、ふとジトリと意味ありげな視線を感じた。
「えぇっと……マリー、何かな?」
「いいえーただ、本当に、殿方というのは本気で愛する女性に出会うと変わるものでございますねぇと思ったものですから」
「そうだね……っていうか、言葉に棘を感じるのは僕だけ?」
美貌の男が、らしくもなくたじろぐ。
「まぁまぁとぉんでもない! 昨夜スイートにお連れになった方はこの前の女性とは違うんですね、とか、みなさん一度きりしかお見掛けしませんねとか、まさかわたくしがライアン様に、そのような出過ぎたことを申し上げるつもりは毛頭ございませんとも! えぇ!」
リスのように膨らんだ頬を見せられて、思わず吹き出した。