マリオネット★クライシス

ジェイから執事のルドルフさんに日本語で紹介してもらった後(彼も日本語が上手かった)、わたしたちはお屋敷の中へ案内された。
外国風に、靴のまま入っていいらしい。

びくつきながら足を踏み入れた内部は、見る限り全くの無人だった。
主要な廊下以外の明かりはすべて落とされ、静まり返ってる。
まるで閉館直後の美術館みたい。


「わ、ぁ……」

それをいいことに、ボケっと声がでちゃった。
だってどこもかしこもほんとにゴージャスなんだもの!

見てよこの扇形に広がった階段! ディズニー映画のお城に出てきそう。
足元は深紅の絨毯でふかふかだし、廊下にシャンデリアってどういうこと?
高そうな絵や彫刻の類もたくさん飾られてて、比喩じゃなく、ほんとに美術館か博物館か、って雰囲気だ。
ここで映画撮ったら、すごく映えるだろうなぁ。


「ユウ、ちゃんと前見てないと転ぶぞ?」
「う、はいっ」

興奮気味のわたしとは対照的に、ジェイはまったく通常モード。
そりゃここは彼の実家だもんね、いちいち驚くはずないか……。


――ユウ、今度はちょっとオレのことを話してもいいかな?

ここに来るまでの道中、泣きじゃくっていたわたしがようやく落ち着いた頃。
彼が打ち明けてくれた話を思い出す。

――本当は、“ファントム”は今夜限りで引退する予定だったんだ。

それは、わたしの想像を遥かに超えたものだった。

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