マリオネット★クライシス
――誓って言うけど、MVを作るために雇った奴ら、ってことじゃないから。
エキストラだと思ったのは、わたしのカン違いだった。
――最初は、オレの偽装旅行に気づいた父さんが、人を使って探してるんだと思った。けど、どうもそんな簡単な話じゃないみたいで……
ジェイは、例の2人組の1人――白人のイケメンさんに思い当たる人物がいたそうだ。
――ライアン・リーって言うんだ。オレの遠縁で、昔からよく知ってるヤツ。オレに声をかけてこないってことから考えて、今は“SD”として動いてるんだなってことも、すぐわかった。
SD……ずっと気になっていたその言葉は、“シークレット・デパートメント”の略称だった。その名の通り総帥直属の極秘部署で、グループ内部のトラブルを調査・処理するのが仕事だとか。
――オレも詳しく知ってるわけじゃないけど、メンバーはグループ会社の御曹司のみって噂だな。
御曹司だらけって……
なんか、ものすごく豪華な部署だよね?
――じゃあ、ジェイのお父さんがその人たちに頼んだってこと? ジェイのこと探してくれって。
――いや、SDがそんな迷子探しみたいなことするはずない。だから、思ったんだ。“どうもそんな簡単な話じゃない”って。おそらく、オレが来日したあたりで、シンガポールの方で何かトラブルが起こったんだと思うけど。
トラブルって何だろう?
ジェイに関係すること?
――でも大丈夫。それがなんにせよ、もうこれで終わりだ。
自分の事情はライアンに打ち明け済みだから、と笑顔を見せたジェイが、教えてくれた。馬淵さんに攫われたわたしの居場所を突き止めることができたのは、ライアンさんのサポートがあったからだって。
いつか、ちゃんとお礼言えたらいいな。