マリオネット★クライシス
カーテンコール 数日後
その日その時間、シンガポール・チャンギ国際空港のとあるカフェでは、店員も客もちょっとそわそわしていた。
落ち着かなげにチラチラと視線をやるその先にいるのは、2人の男性客だ。
目立たない奥まった席に座る、バックパッカーのようにラフな装いの2人。
にも関わらず、やたら注目を集めている。
それはおそらく彼らの、ファッション誌の撮影を終えてきたばかりと言ってもおかしくないほどの麗しい容姿のせいだろう。
手っ取り早く種明かしをすると、ジェイとライアンである。
ジェイは総帥との面会を終えて日本へ戻るところ、反対にライアンは総帥への報告のために日本から着いたところだった。
<でもびっくりしたよ。まさかオレが、麻薬組織との関係を疑われてたなんて>
呆れたようにジェイが首をふる。
思い出しても腹が立つほど、本社で聞かされたのは寝耳に水の話ばかりだった。
直接の発端は、関連会社の所有するコンテナ船から見つかった覚せい剤である。
横浜港に停泊中だったことから日本の警察が捜査を開始。
リーズグループとしても、内部に国際的な麻薬組織に関わっている者がいるのではと報じられては黙っているわけにもいかない。
加えて、最近グループ会社が狙い撃ちにされる詐欺や事件が頻発しており、それとの関連も含めてSDによる調査が始まった。
そこでなぜか出てきたのが、ジェイの名前である。