マリオネット★クライシス
確かに以前、経済や政治と絡めて国際的な麻薬問題を論文にまとめ、その中でリーズグループの取り組みの不十分さを指摘していた。
今回の犯人たちは、まさにジェイが警鐘を鳴らしたその穴を突いてきたらしく、そのせいで彼の関与を指摘する声があがった、というのだ。
そんなの少し詳しい者なら誰だって考えつくだろう、と思うのだが、古狸たちには理解できなかったらしい。
運が悪かったのは、息子が疑われていると聞きつけた李偉平が慌ててジェイに連絡を取ろうとした時、彼はすでに日本行きのプランに熱中していたこと。
メールはろくに確認せず、返事も返さなかった。
そしてそのまま、極秘に来日を決行した。
その間にSDでは調査が進み、ジェイに隠し口座があること、そこに莫大な金がプールされていることを突き止める。
呼び出そうとすれば、フロリダへ旅行中というがそれは嘘。
本人は行方不明、スマホもつながらない、父親も行方を知らない……と、どんどん坂を転がるように状況は彼にとって不利なものとなっていったわけである。
<まぁ最近いろいろあって、みんな疑心暗鬼だったからね。しかも僕らは何かと敵が多いし、あの中では>
皮肉っぽく片頬を上げたライアンは、優雅にカップを傾けた。
ジェイもそれに倣ってコーヒーを啜る。
2人とも多くは語らなかった。
自分たちは余所者である、それは昔から暗黙の了解だったから。
理由は、リーズグループの歴史にあった。