マリオネット★クライシス
ヒヤリとしたものの過る胸のあたりを押え、急いで首を振った。
自分の直感を信じたい。
彼はそんな人じゃないって。
そもそも、わたしに利用価値なんてないんだから。
でも……じゃあどうしてって疑問が残る。
相手に困ることなんて一生なさそうな顔してるくせに。
それに、なんでかな。
今になって妙に瞼の裏にチラつくんだよね、あの紅い花が――
「ユウ?」
「はっはいっ!」
頭の中が読まれたのかと、電池が切れかけたおもちゃみたいにぎこちない動きで、彼の胸元に合わせていた視線を持ち上げた。
「もしかして、緊張してる?」
優しい指先が、頬に触れる。
「あ、あのっ――」
「大丈夫。オレが最高の思い出にしてやるから」
前の席に聞こえないように、だろう。
身を乗り出してきた彼にキスできちゃいそうな距離で囁かれ、ゾクッと何かが背筋を駆けた。
うぅ。
座ってなかったら、腰抜けてたかも……
ドキドキバクバク、動揺を隠せないわたしとは対照的に、隣のその人はさっさと姿勢を戻し、余裕たっぷりに再びスマホを見てたりして。
なんか……レベル違いすぎない?