マリオネット★クライシス
マンションからここまで、どうやってたどり着いたのか覚えていない。
とにかく一人になりたかった。
きゃはははっ……
あはははは……
楽し気な表通りの笑い声が、彼女のいる屋上までかすかに届く。
芸能界になど入らなければ、違っていただろうか。
ごく普通の高校生らしく、週末には友達と出かけて恋バナで盛り上がって、思いきり笑って……。
(今のわたしには、失恋しちゃった、って泣きつく相手もいない)
「っ……」
こみ上げてくる苦いものを押し殺すように、柵に額を押し付けた。
“君に恋、しちゃったみたいだ”
彼に告白された時、CMのキャッチコピーのようだ、とのぼせた頭で考えたことを思い出す。
まさかほんとに、コピーだったとは。
そんなセリフに酔って、信じ切っていた自分が惨めだった。
(結局、わたしを愛してくれる人なんて、どこにもいない。みんなみんな、離れて行くんだ)
……チリン。