マリオネット★クライシス
微かに風鈴の音が聞こえた気がして、瞬間、背筋が強張った。
空耳だとわかるとホッと肩を落とし――それから思いっきり息を吸い込んだ。
「柏木ヒナタのバカヤローーーーー!!!!!
わたしのファーストキス、返せえええええーっ!!!」
舞台稽古で鍛えた美声。
残念ながらそれは繁華街のざわめきにまぎれ、誰にも届くことなく消えていく――はずだった。
ところが、信じられないことが起きた。
ぶぶっと背後で、誰かが吹き出したのだ。
若い男の声だった。